「本当に起業できるの?」実現可能性という壁を超えるために


<POINT③>事業計画をプレゼンする前に、人として信頼できる人物であれ
事業計画を作成する際に、一番大切なこと。それは、その計画が本当に実現可能かどうかということである。

実現性の高さを説明するのに一番効果的な方法は、「数字」を使って説明することだ。事業アイデアの相談を受ける際、よく事業計画書の中にざっくりとしか数字しか書かれていないものを見る。しかしそのようないい加減な数字しか語れない経営者を、投資家は信用しないだろう。どこまでリアルに事業を予測し、きちんと考え数字を積み上げているかが、実際の投資の現場では問われるのである。

それでは事業計画の数字を組み上げる場合、どうすればリアル感を出せるのだろうか。そのポイントは、「与件条件の設定方法」にある。

新しい事業の計画を立案する際には、まず以下のような想定しなければならない仮定条件(=与件)を設定する。

・商品がどれだけ売れるのか
・その根拠は何か
・その売上を達成するために必要な資源やコストはどれほどか

この与件がリアルであればあるほど、事業計画の数字に信憑性が高まる。

また事業計画の数字は、原則として積み上げて算出することが求められる。ざっくりこれくらいと記載するのではなく、月次ベースで想定される売上や原価、販管費などをきちんと科目別に積み上げ、積算して算出するようにするのである。

<POINT④>事業計画は数字が命。数字の根拠となる与件にリアル感があるかどうか
どのようにすれば、与件がリアルなものになるのか。一番分かりやすいのは、すでにトライアルなどを実施して実証結果を持っていることだ。
例えば試作品を作成して実際に販売したところ、3日間で10件の受注を受けたという実績があれば、それを積算することでおおよその年間売上を計算することができる。また実際に売った実績があるため、説得力も強い。
しかしこうした実績は、誰にでも作れるわけではないだろう。トライアルの実施が難しい場合には、アンケート調査やインタビューなどを行い、その結果に基づいて想定数値を算定する。今はインターネットから様々な声を簡単に集めることができるので、統計的に有効とされる回答数を収集・分析することで、自分の立てた予測値がどれだけ市場期待値と重なっているかを証明することが可能だ。
良いアイデアがあったら、まずはそれが市場に受け入れられるかどうかをテストする。この癖をつけておくことは、とても大切である。そのアイデアが一人よがりではなく、実際に市場価値が高くて多くの人に受け入れられるものであれば、将来大きな売上に繋がる可能性は高いといえるだろう。

テスト結果や実証結果は、事業計画書を投資家に提出する際に参考資料として添付する。実際の説明時間は短いので、すべてを説明することはできないだろう。しかし投資家からある数字について聞かれた場合、そこに「なるほど!」と思わせる具体的かつ詳細な根拠がなければならないのだ。そのためにも、前述のような検証作業は起業前に行っておいた方が良いだろう。
ビジネスアイデアの市場性を試すためのトライアルモデルのことを、私は「プロトタイプ」と呼んでいる。有効なビジネスプロトタイプを構築し、その結果を記録しておくことは、事業計画のリアル度を高める上でとても有効だ。是非とも、起業前に自分のビジネスアイデアをある程度市場でテストする機会を設けるようにしてほしい。

<POINT⑤>そのビジネスが市場に受け入れられる具体的な根拠はあるか?
(マーケティングリサーチ・テスト販売・プロトタイプの構築など)
ある程度リアルな数字が事業計画に記載されており、面白いビジネスアイデアだとしよう。ではそれだけで、投資家は投資をするのだろうか?実は投資を受ける視点から、もう1つ非常に大切な要素があるのだ。それが、「成長性」である。

投資家の期待値は、ある事業に投資した資金が何倍にもなって自分の懐に帰ってくることにある。当然ながら資金が増えるためには、その投資した事業が成長しなければならない。どんなに面白いアイデアであっても、誰かに簡単に真似できるようなものでは将来の成長は見込めない。また、競合商品などがある場合にはなおさらだ。
投資家は事業計画を見る際に、必ずその事業が将来どの程度成長するのかを見極めているものである。逆に投資家に評価される事業計画では、将来大きな成長が見込めることを具体的に説明しているのだ。自身のビジネスについて、市場規模はどの程度なのか。あるいは市場ライフサイクルでの位置付けや競合・代替商品の状況などを様々な視点で評価し、その成長性をきちんと説明することが大切となる。


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この記事を書いた人

静岡県出身。東北大学工学部応用物理学科卒。
1993年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。大手会計システムの設計・開発・データ移行に携わる。同社戦略グループへ配属後、医療法人システム導入PJT、大手石油会社業務改革に従事。同社を退社後、個人で複数の中小企業を相手に経営診断、営業支援を実施した後、1998年(株)ベルハート入社。発信型テレマーケティングメソッドの開発・導入指導をしつつ、1999年Bell Heart Inex Le Corp.代表として台湾へ赴任。同事業黒字化の後、代表退任し帰国。

2000年(株)ラストリゾート入社。国内拠点、海外拠点の拡大に従事。同年、同社取締役。2002年、同社取締役事業本部長就任。2006年代表取締役に就任。2009年同社代表退任後、数々の新規事業、新会社設立に参画。コンサルティングや経営参画しつつ、多くのプロジェクトに足を突っ込む根っからのお節介。
生涯調達資金額が70億円を超える資金調達のスペシャリスト。

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