事業計画を伝える場:プレゼンテーション


<POINT⑥>高い成長性が見込める事業であるかどうか?またその根拠が明確であるか
投資にリスクが伴うことを、投資家は当然のこととして知っている。例えばベンチャーキャピタルのような投資の専門家であっても、投資先が計画通り順調に事業が進み、株式上場まで進む確率はとても少ないのである。それだけ不確定なものに対して、何百万何千万、場合によっては億単位のお金を出すわけであるから、その審査は非常にシビアなものになる。

これまで、多くの投資現場に立ち会って感じたこと。それは投資判断において、経営者の人物像を投資家は見ているということだ。

どんなに優れて完璧な事業計画を持参しても、経営者に魅力が無ければ投資を得ることはできない。逆に事業計画に多少の不安材料があっても、経営者が魅力的な人物であれば投資を得られることはあり得る。投資を受けられるかどうかは、投資家が経営者、つまりあなた自身に魅力を感じ、信頼できると判断したかどうかにかかっているわけである。
面談は、そうした事業計画上には表れない経営者の人柄や信頼感を、直接確認できる機会となる。事業計画の説明に没頭するあまり、このことを忘れてしまっては何にもならない。経営者・事業家である前に、まずは一人の人間として信頼でき、魅力的であることが大切なのだ。

投資家といっても、実に様々な方がいる。そのため、目の前の投資家が何を求めているのかをよく考えることが必要だ。個人投資家のように余裕資産を運用している人もいれば、ベンチャーキャピタルや投資ファンドのように、投資の回収期限が決まっているようなケースもある。そうした相手のニーズに応じて、相手の心に刺さる言葉を使うことが重要なのだ。

実際のプレゼンにおいては、ほとんどの場合時間が限られている。つまり限られた時間の中で、自分が最も伝えたいことを分かりやすく伝えることが求められるわけだ。与えられるプレゼン時間は、5分の場合もあれば1時間の場合もあるだろう。どのような時間を与えられても、事業の内容や魅力、なぜ投資を受けたいのかといった内容を、分かりやすく端的に投資家へ伝えることが必要になる。そのためには、プレゼン時間ごとにいくつかのプレゼンパターンを用意しておくと良いだろう。

ところで、「ピッチコンテスト」という言葉をご存知だろうか?
ピッチコンテストとは“エレベーター・ピッチ”に由来する言葉で、米国シリコンバレーがその起源となっている。ここでは明日の大企業を目指す多くの起業家たちが、日に数十件の投資案件を目にするプロの投資家に対して、自分のビジネスプランをアピールしている。
仮にエレベーターの中で偶然投資家に出会ったとして、自分の事業について端的に説明して興味を持ってもらえれば、後の投資に繋がるかもしれない。しかしエレベーターの移動時間は、たったの数十秒程度。つまりそんな短時間でも、自分自身や事業の魅力を伝え、かつ投資家の興味を得ることが求められているのだ。

プレゼンの内容は、常に30秒で要約できるようにしておくことが大切である。なぜならまず伝えたいことを30秒で的確に伝えられれば、そこから話を膨らませていくことは難しくないからだ。
逆に1時間のプレゼンに馴れてしまうと、ポイントだけを短時間で伝えることに慣れることができない。するとピッチコンテストのような短時間でのアピールタイムを得ても、せっかくのチャンスを無駄にすることになってしまうのだ。
そのためにも、日頃から効果的な表現方法(どのような言葉を使うのか 等)を考え、会う人へ実際に説明しながら、ブラッシュアップを重ねていくことが大切となる。プレゼン用の言葉ではなく、いつでも自分の言葉としてそうした語句が自然と口から出てくるようになれば、プレゼンの場でも自然に話せるようになるだろう。

<POINT⑦>使う言葉を慎重に選ぶ。伝えたいことはシンプルに分かりやすく端的に
プレゼンでは、実に様々な質問が投資家から与えらる。しかしその質問に対して、思いつきのようなその場を繕ういい加減な回答をすることは絶対に避けなければならない。
相手は、数字のプロである。その数字が本当に考え抜いて作られたものか、あるいは一時の思いつきで出てきたものかなど、すぐに見抜かれてしまうだろう。1つでもいい加減なところが露呈してしまえば、事業計画全体がいい加減だという烙印を押されてしまうこととなる。99%完璧なものであっても、1%いい加減な部分があれば、その説明を行った経営者への信頼はゼロになってしまう。

もし分からない質問が出たのであれば、素直に分からないことを認めよう。その質問については、後日追加資料として回答と一緒に提出をすれば良いのだ。そうした姿勢こそが、投資家に対する信頼感を高めることに繋がる。
但し当然ながら、全ての質問に「分かりません」と答えていたのではいけない。考えられるだけの想定質問は、あらかじめきちんと答えられるように準備しておく必要があるのだ。

<POINT⑧>いい加減な説明は一切しない。一つのごまかしがすべてを崩す
投資家とはいえ、最終的に判断するのは人である。そのため、そこには感情が入るだろう。嫌な感じのする人よりも、良い感じの人に投資をしたくなるのは当たり前のことだ。
世の中には、考えている以上にたくさんの投資案件がある。忙しい時間の中で自分の事業に関する話を聞いてもらえるということは、とてもありがたいことなのだ。そうした機会を得られたことに、きちんと感謝すること。そしてその機会を存分に活かし、自分の事業に対する強い思いを情熱的に分かりやすく伝えることが大切である。
最後は、人対人。誠心誠意を持って、最高の笑顔でプレゼンを締めくくりたい。

<POINT⑨>笑顔、熱意、そして感謝の心
きちんとした事業計画を作ることは、もちろん大切なことだ。しかし実際の投資や融資の判断においては、そのプラン以上に見られているものがある。それは経営者本人が何を考え、どのような人物であるのかという点だ。
せっかく想いを込めて作った事業計画なのだから、しっかりと相手にその真意が伝わるよう、プレゼンテーションにも力を入れよう。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

静岡県出身。東北大学工学部応用物理学科卒。
1993年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。大手会計システムの設計・開発・データ移行に携わる。同社戦略グループへ配属後、医療法人システム導入PJT、大手石油会社業務改革に従事。同社を退社後、個人で複数の中小企業を相手に経営診断、営業支援を実施した後、1998年(株)ベルハート入社。発信型テレマーケティングメソッドの開発・導入指導をしつつ、1999年Bell Heart Inex Le Corp.代表として台湾へ赴任。同事業黒字化の後、代表退任し帰国。

2000年(株)ラストリゾート入社。国内拠点、海外拠点の拡大に従事。同年、同社取締役。2002年、同社取締役事業本部長就任。2006年代表取締役に就任。2009年同社代表退任後、数々の新規事業、新会社設立に参画。コンサルティングや経営参画しつつ、多くのプロジェクトに足を突っ込む根っからのお節介。
生涯調達資金額が70億円を超える資金調達のスペシャリスト。

コメント

コメントする

目次
閉じる