社会起業家


昨日20円で世界をつなぐ社会起業家のお話を紹介したが
今日は、最近トレンドになっている社会起業家そのものに
ついて取り上げてみたい。
社会起業家については、以下の書籍に分かり易くまとめられている。

社会起業家-社会責任ビジネスの新しい潮流-
著者:斎藤槙
出版社:岩波新書
コード:ISBN4-00-430900-X C0236

ちょっと中身を紹介しよう。

 はじめに
「社会起業家」とは何か? 本書は、この問いを明らかにし、その意義を探るためにある。最近、様々なメディアで取り上げるようになった彼らの働き方や生き方、そして価値観を見つめながら、これからの社会と個人のかかわり方について、考えていこうというものである。
社会起業家は、本当に社会を変える救世主となるのか、あるいは単に一過性の流行で終わるのか。それは、これから十年、二十年という時間が経たなければ、分からないかもしれない。しかし、高まりつつあるその潮流をみることで、ビジネスや社会のことを深く考えている人々にとって、本書が何らかのヒントになればと思う。本書は、次のような方に読んでいただきたいと思って書き下した。

● 企業の社会責任(CSR:Corporate Social Responsibility)や
● 社会責任投資(SRI:Social Responsibility Investment)に関心がある人
● 環境や社会のニーズを無視した利益至上主義というこれまでの企業のあり方に
● 疑問を感じている人
● NPOで働くことには興味があるが、果たしてそれで生活ができるのかと、
● 不安を抱いている人
● 就職活動、転職活動で迷っている人
● 政府、企業、NPOの垣根を越えたパートナーシップの可能性を信じている人
● ビジネスを通じて環境や社会によいことをしたいと思っている人
● 好きなこと、楽しいこと、得意なことを生かして働きたいと思っている人

 社会起業家という概念は、一九八〇年代初頭にイギリスで生まれた。福祉国家に代わって自立型の福祉システムを構築していく存在、停滞した社会を活性化する存在として注目され、広がっていった。しかし、現在使われている社会起業家という言葉は、時代の流れにしたがって若干意味合いが変わったり、現代の事情に合わせて新しい概念が付け加えられたりしてきている。新しい点は、次の二点に集約できるだろう。

一つ目は、
現代の社会起業家が、働くという行為を単に収入を得る手段としてだけでなく、自己実現の場だと考えている点だ。日本でもアメリカでも、その他の国でも、経済が成長している時は、「金を稼ぐ」ことが至上の目標になりやすい。しかし、景気が低迷期に入ると、金銭的目標達成の空しさなどが見えてきて、金を稼いでも「満たされない」という思いが頭をもたげるようになる。
 現代の社会起業家は、自分に与えられた人生を価値あるものにしたいと考えている人たちだ。「人生の意義」を土台に据えて、その上に様々な価値観を築き上げ、その実現に向けて、積極的で主体的な生き方をしていこうとする。大げさに言うと、「いったい何のために生きているのか」と自分の存在を見つめなおし、その問いに対する答えとして事業を起こしているのだ。

二つ目は、
社会や環境や人権など、地球規模の課題や地域社会が抱える課題に対して使命感を持って挑み、事業を行なっているという点だ。事業の形態は、営利企業のこともあればNPO(非営利団体)のこともある。しかしいずれにしても、社会起業家は、「社会をよくする」という目標に忠実に行動する。

 チャレンジと葛藤
日本において、社会起業家が担う役割は、特に大きい。ややもすると固定化しがちな社会と経済のあり方、そして画一的になりがちな価値観について、あらためて考えるきっかけを与えてくれると思うからだ。
 例えば、偏差値を重視するあまり「没個」へと流れてきた戦後の教育。出る杭は打たれる「事なかれ主義」の行政や企業文化。集団のためなら自分を犠牲にするのは当然で、多数派にそむくと後ろ指を指される「村社会」。そして、環境保全や社会正義を反故にしてでも、自分の会社や組織を繁栄させようとする「利益至上主義」――。経済が発展してきた過程で私たちが置き去りにしてきた大切な価値観を思い出させ、取り戻すきっかけと勇気を、社会起業家はもたらそうとしているのではないか。彼らの活躍を目の当たりにするにつけ、私たちは、「自分にとって大切な価値とは何か?」「それを守るために自分に何ができるのか?」という問いかけを余儀なくさせられる。

 こうして、非常にポジティブな存在としてメディアなどでも取り上げられることが増えている社会起業家だが、もちろん、すべてが追い風というわけではないのも事実だ。必然とも言える悩みやジレンマに直面して、葛藤を続けている一面も、決して見逃せない。
「世界的な規模で事業展開するグローバル企業に対して、『社会に良いことをしている』というだけで競争してやっていけるのか?」「ビジネスの繁栄と社会への貢献は、そもそも本当に両立できるのか?」「社会や環境にやさしいビジネスというだけでニッチ産業と受け取られ、ビジネス界のメジャーと見てもらえず、投資家や取引先を探すうえで困難が付きまとう」「NPOで働くことは尊い行為と思われているが、実際にはそれなりの見返りがなくては続かないし、優秀な人材も集まらない。そこでビジネス化を進めようとするが、今度は逆に、商業的との批判を浴びる結果になる」
社会起業家たちは、開拓者精神にあふれ、ポジティブな思考に長けた人たちだ。それでもなお、こうして壁にぶつかり、悩んでいる場合もある。成功を収めているように見えても、心は常に揺れ動いていることもある。これが紛れもない現実だということを、強調しておきたい。

 本書では、日本と世界で活躍する起業家をたくさん紹介したが、社会起業家とは、独立して会社を起こす人だけを指しているわけではない。NPOや行政の職員として働いている人も、サラリーマンとして会社に勤めている人も、社会起業家とされる可能性はある。組織のしがらみや偏った帰属意識のプレッシャーに負けずに、「社会をよくしよう」という志の下に、価値のある新しい仕事にチャレンジしてさえいれば、立派な社会起業家なのだ。
私自身が社会人のスタートが会社員だったこともあり、個人的には、問題意識を持ちながら前向きに働いている組織人の存在を社会起業家として意識してしまうのだ。

 本書の構成について
本書では、第一章で、社会起業家とは何かを解説する。営利企業でありながら環境・社会運動を行うベン&ジェリーアイスクリームは「NPO(非営利組織)のような企業」とよく言われる。また、ホームレスを支援する非営利組織のコモングラウンドはNPOでありながら、さながらデベロッパーのように大規模な開発を展開する「企業のようなNPO」である。では、そのどちらが「社会起業家」なのだろう。答えは、どちらもそうなのである。このような「NPOのような企業」「企業のようなNPO」を紹介しながら、社会起業家の登場によってもたらされたビジネスの社会化、そしてNPOのビジネス化という潮流を追っていく。

第二章では、企業が社会化を進め、社会的責任(CSR)にこだわるようになったのは何故か、また、逆に、本来営利を目的にしていないNPOがここにきてビジネス化を推し進めている背景は何か、などについて解説をする。そしてその結果、顕著になりつつある企業とNPOのパートナーシップについても紹介する。

第三章では、こうした潮流を促している「応援団」ともいえるさまざまな組織の動きとそのジレンマを論じる。グローバル企業が頼りにしている国際組織BSR(ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ)、自営業や地域産業の悩みを解決する会員制組織SVN(ソーシャル・ベンチャー・ネットワーク)、社会責任投資(SRI)を推進する社会投資フォーラム、MBA(経営学修士)ならぬ「グリーンMBA」の台頭など、応援団の活動は幅広い。

続いて第四章では、実際に活躍するアメリカの社会起業家たちの様子を詳しくみていき、第五章では、日本人の活躍も紹介する。国籍や活動する場が違っても、両者には共通点がある。「好きだから興味を持った」「どうしたら現状をよく出来るか」など、一個人が抱いた好奇心や疑問が、その解決に向けた行動といっしょになるとき、結果、大きなことを成し遂げる。経済問題や社会問題を個人の発想で生まれた斬新な手段で解決していく、彼らの行動力から学ぶことは多い。

最終章の第六章では、社会起業家たちが日本に与える経済的、社会的、人的インパクトについてみていく。第一に、社会での成功方程式に「起業」という新しい選択肢をもたらした彼らの経済への貢献は大きい。社会起業家が得意とする社会サービスの分野は、日本経済においても大きな市場になりつつあり、彼らのさらなる活躍に大きな期待がかかる。

第二のインパクトとして挙げられるのは、市民社会の形成だ。等身大の感覚を持っている社会起業家は、市民の視点を事業に取り込みながら、社会のあるべき姿を提示していく。その姿勢は、これまで、政府、企業、NPOという単体の枠組みではできなかったことを可能にする。なぜなら、「所属する組織に対する忠誠心」ではなく、「目的達成に対する忠誠心」を中心に行動するからだ。

社会起業家が与える第三のインパクトは、ライフスタイルの提唱だ。「働き方と生き方が同じ」という事実に注目したい。つまり、働くという行為が、自己実現や自己表現の手段なのである。日本にはもともと趣味が仕事という人が多く、仕事を人生を重ねるところがある。だからこそ、自分の価値観を仕事に反映させることで、心の満足感をえる社会起業家的な働き方は、これからの時代にマッチした生き方なのである。

 結びの言葉
本書の執筆を通じて、私は、社会起業家たちから、たくさんの勇気を与えられました。

ここで、彼らから教わった生き方と働き方の極意を十個、披露すると……

 1. 自分の好きなこと、楽しいことに夢中になろう。
 2. いろいろな人と喜びや悩みや夢を分かち合おう。
 3. 効率を優先させない。何が大切かを見極める。
 4. かわいい子には旅をさせよ。かわいい子だけでなく、
 4. 自分がかわいい大人も旅に出よう。きっと名案が浮かぶから。
 5. おかげさまの気持ちを忘れずにいよう。
 6. あきらめるから失敗する。成功するまで頑張ろう。
 7. 人と競争するのではなく「協奏」しよう。
 8. 人生に無駄はない。一見、マイナスなことでもそこから何かが見えてくる。
 9. 人がどう思うかではなく、自分がどう思うかを大切にしよう。
 10. たまには自分を褒めよう。

皆様にも元気が伝わりますように。そして生き方、働き方のヒントになりますように。

本書を通じて著者が最も言いたいのは、長期低迷を続ける日本の社会にとって、
社会起業家が大きな起爆剤になりうるのではないかということだ。
戦後六十年近い歴史を通じて、民間企業は、社会的責任よりも
経済的責任を果たすことを期待されてきた。
国の経済を繁栄させること、勤労者の生活を豊かにすることが、
第一の目標だった。

一方、社会的な事業を担ってきた行政やNPOの世界では、
使命の追求を重視するあまり、運営効率やコスト意識などが希薄だった。
極端に言うと、正しいことさえしていればいいのだ、
という意識が強すぎたのである。
そして、この両者はこれまで、交わる機会がほとんどなかった。
「企業さんのやることは……」
「NPOさんのやることは……」
と、双方を少し揶揄するような態度で眺めてきた、
というのが現実だろう。
このために、社会のダイナミックな変革は、なかなか生まれにくかった。

こうしたなか、社会起業家は、今までの「あるべき」論を無視して、
突破口を提案した。
彼らが作り出した事業モデルと、彼らが発揮した行動力は、
社会と経済の活性化という点で、きわめて示唆に富んでいる。
社会起業家は創造性、柔軟性、そして力強さの点で、
次代をリードしていく存在になると感じさせる。

地球環境、社会福祉、南北格差といった様々な問題の
複雑さがますます明らかになっている現代にあって、
社会起業家の生き方や考え方は、私たちにヒントを与えてくれる。
それを紹介する本書が、今後の企業とNPOのあり方、
企業・NPO・政府間協力の可能性、個人の働き方の参考になればと
著者は説いている。

次世代の事業インフラの大きな一つの候補としてこれからも
社会起業家の動向に注目したい。

<今日の記録>
RUN:10km(今月累計:370km 年間累計:700km)
体重:80.3kg
体脂肪率:19.4%
取得カロリー:2400
消費カロリー:▲3000
合計カロリー:▲600(累計▲19060)

<今日の食事>
朝:食パン2枚

昼:中華

おやつ:カレーパンもどき+アイス

夜:おすし+コーヒー


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この記事を書いた人

静岡県出身。東北大学工学部応用物理学科卒。
1993年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。大手会計システムの設計・開発・データ移行に携わる。同社戦略グループへ配属後、医療法人システム導入PJT、大手石油会社業務改革に従事。同社を退社後、個人で複数の中小企業を相手に経営診断、営業支援を実施した後、1998年(株)ベルハート入社。発信型テレマーケティングメソッドの開発・導入指導をしつつ、1999年Bell Heart Inex Le Corp.代表として台湾へ赴任。同事業黒字化の後、代表退任し帰国。

2000年(株)ラストリゾート入社。国内拠点、海外拠点の拡大に従事。同年、同社取締役。2002年、同社取締役事業本部長就任。2006年代表取締役に就任。2009年同社代表退任後、数々の新規事業、新会社設立に参画。コンサルティングや経営参画しつつ、多くのプロジェクトに足を突っ込む根っからのお節介。
生涯調達資金額が70億円を超える資金調達のスペシャリスト。

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